前置胎盤について
日頃から時折訪れてくださる患者さんが、待望のご懐妊。
日々を大切に大切に、過ごしていらっしゃいます。
妊娠21週の妊婦健診で、
「全前置胎盤の疑いあり、このままいくと帝王切開での出産となり、出血量が多くなるかもしれません・・・・・。」
「とのことなんです。鍼灸で何とかなりませんか?」
婦人科系のお悩みやつわり、逆子などのお悩みをお持ちの方のケアはよくあることですが、前置胎盤は初めてのケースです。
しばらくお時間をいただきました。
ここから少しだけ東洋医学のお話です。
妊娠、出産についての病理を考察し、症例を検討する中で考えられるのが、3つの陰経の作用の低下です。
・脾の昇清作用
きれいなものを上にあげる、内臓の位置を保つなど
・腎の蔵精作用
生命力の源の腎に蔵されている
・肝の疏泄作用
気血の流れを円滑にし、かつのびやかにする
ん-、どれだ・・・・?
では、3つの陰経の流注(流れのこと)をみると、
肝経は、陰部からお腹の中に入り、子宮を通過します。
子宮は、ほかの臓腑より筋肉量が多いところ。
そうだ、足の第一指から続く肝経から緩めていけば、子宮が緩んでふっくらとなり、下に引っ張られている胎盤が上に移動できるんじゃないかな?
施術にお越しいただきました。
脈診、予想通り、肝の脈が硬い、しかも夏なのにやや冷えを表す脈もあり。
足は冷たく、手は熱い。
足部両方とも陰経が引っ張られている内反足。
施術は、
肝の硬さを取る「大敦」と冷えを取る「中封」に鍼、「三陰交」にお灸。
下肢の内側、特に太ももの内側をもみほぐしました。
このような施術をだいたい週に2回繰り返し、
26週には胎盤位置が上昇したのを確認して、経膣分娩可能との所見をいただきました。
その後も、太ももの内側を揉みほぐすセルフケアは続けていただいていて、経過は良好です。
前置胎盤は、原因がわからず、治療法が確立していないようです。
今回のことは、一つの症例ですが、下肢陰経がのびやかで充実していることは、妊娠、出産、産後の回復に大変重要であることは、間違いありません。
そして、これから妊娠を希望される方は、脚の内側を柔らかくしておくことをお勧めします。妊娠初期は、脚の内側のツボを触ることはよくないとされています。(諸説あるようですが、私はこの説を採用しています。)だから、妊娠してからでは、肝の経絡を柔らかくできる範囲が限られてきます。
これから先、ここに書かせていただきましたことが、少しでも前置胎盤で悩んでいる方のお役に立てればありがたいです。